ボレーで最も大切なのは面の角度です。
そして面の角度を維持するのに重要なのが「手首」です。
ラケットを持つ手を一番近くでコントロールする部位が手首なので、手首の使い方ひとつでボレーの成否が決まります。
今回はボレーでの手首の使い方と、手首が痛くなる原因についてみていきます。
ボレーでの手首の使い方
まずはキャッチボールをイメージしてみてください。
ボールを身体の前で捕るとき、手首のかたちはどうなっているでしょうか。
おそらく手のひらがボールの飛んでくる方向に向くように、手首が後ろに反っているはずです。
この手首のかたちを「背屈」といいます。
そして手のひらをラケット面だとすると、ラケット面を手のひらと同じ方向に向けるには、ウエスタングリップで握ればよいとわかります。
つまり、ウエスタングリップでのボレーはキャッチボールと同じように、手首を背屈させて身体の前で捉えればOKです。
ボールがあんまり飛ばんから、厚めのグリップで弾き優先でボレーするんや。
では、硬式に多いコンチネンタルグリップなどの薄めの握りでのボレーではどうでしょうか。
包丁持ちなので、手のひらをチョップのかたちにしてください。
チョップの構えで、キャッチボールのように身体の前で捕ろうとしても、手のひらが横を向いてしまっているので捕れるはずがありません。
必然的に身体を90度ターンして、身体の横で捕球することになります。もちろん、腕の動く範囲で斜め前で捕ったりはできますが、基本的には横です。
このとき、手首は腕から真っ直ぐの一切曲がっていない状態でもキャッチすることはできます。
できますが、、どうでしょう。指先が上を向くようにして捕る人が多いんじゃないでしょうか?
なぜならそのほうがボールをキャッチしやすいからです。グローブをはめた状態だとわかりやすいかと思います。
指先が上を向いたとき、手首は身体方向に曲がります。この手首のかたちを「撓屈」といいます。
高いところで捕るとき手首はあまり撓屈しませんが、低いところで捕るときは90度近く撓屈するはずです。
ウエスタングリップでは手首を背屈させるだけなので、ボールをフラットに弾き返すことしかできません。
しかし、コンチネンタルグリップなら手首を撓屈するだけでフラットに当てることができるので、プラス背屈を加えることでスライス回転を加えることが可能となります。
硬式はボールが跳ねやすく簡単に飛んでいってしまうので、基本はフラットですが必要に応じてスライス回転をかけられたほうが有利です。
ということで、ウエスタングリップなら打点は身体の前で手首は90度背屈した状態、コンチネンタルグリップなら打点は身体の横(〜斜め前)で手首は90度撓屈した状態で、ボールを待ち構えるのが基本です。
基本はあくまでキャッチボールと一緒。
キャッチボールで指先をボール方向に向けた状態で待ちませんよね?突き指しますね。
キャッチボールで腕をブンブン振ったりしませんよね?ボール捕るどころか身体に当たりますよ。
それと同じです。
ボールが飛んでくる軌道上に、ボールをキャッチしやすいかたちでグローブを構えるだけ。
横にそれた球を捕るには身体をターンするだけ。手首のかたちは変えない。
一番多いミスはチャンスボールなどで威力を出そうと手首をこねてしまい、面がアッチの方向を向いてしまうことです。
威力を出すにしても、90度背屈や90度撓屈の手首のかたちを変えてはいけません。
逆に身体の真正面は捕りにくいから、そこは足を動かして身体を逃がしてやるとこや。
ちなみにバック側はキャッチボールとは手首のかたち違うけど、そこはラケットは裏面が使えるからその違いやな。
ボレーで手首が痛くなる原因
手首の怪我で苦しんでいるといえば、錦織選手が頭に浮かびます。
プロ選手は身体を酷使しているので美しいフォームで打ち続けていても、蓄積されたダメージが怪我に繋がることはあります。
しかし、毎日激しい練習をしているわけでもないのにどこか痛めるとすれば、それは負担の大きいフォームで打っているからにほかなりません。
私は10年以上ぼちぼちテニスを続けていますが、今まで怪我という怪我は一度しかありません。
別に綺麗なフォームで打てているとは思いませんが、身体のどこかに大きな負担のかかるフォームではないということです。
テニスで痛くなるといえば肘、そして手首が多く、例えばサーブで身体が許容する以上に肘や手首を回旋していたり、ストロークで無理やりスピンをかけようと肘や手首を回旋するケースが見受けられます。
ボレーで手首が痛くなるのは、相手の強打を芯を外したところでまともに受けることを繰り返したり、スライスをかけようとして本来不要な手首の動きを使ったりする場合があります。
あとはウエスタングリップで握っていた人が、コンチネンタルグリップに握りかえようとして、いままで通り身体の前でボレーしようと無理やり手首を捻ったり・・・。握りかえてる意味がまるでないですよね^^; さらにいえばウエスタンだと肘から上しか使わないので、コンチネンタルでも肩をつかった動きができずに変なフォームになっていたり・・・。
そして、テニスでの手首の怪我の大半は「腱鞘炎」か「TFCC損傷」のどちらかです。
腱鞘炎はよく聞くかと思いますが手首の使いすぎが原因で、痛む場所は使いすぎてる場所によります。
TFCC損傷は小指側のつけ根あたりが痛みます。
いずれにせよ、炎症が起こっている状態なので、痛みが軽いなら1週間〜1ヶ月程度安静にして、炎症が収まるまでは動かさないことです。
痛みが出てすぐの頃は冷湿布などで冷やすことで炎症が大きくなるのを防ぎ、炎症の範囲が小さくなりだす頃は温湿布などで温めることで炎症まわりの血流をよくして流していきます。
また、テニス用の手首サポーターなどで固定するのも良いですが、強く固定しすぎると血流が悪くなったりするので、使うならソフトなものにするか医師に相談したほうが無難です。
そして炎症が収まったら、逆に徐々に動かさないと筋肉が凝り固まって動きが悪くなるので注意しましょう。
痛みが強かったり、痛みがひかないようなら病院に行ったほうが懸命です。
TFCC損傷の場合、骨ではなくその周りの柔らかい組織の損傷の可能性があるため、レントゲンでは診断できずMRIでの診断となります。
MRIでの検査はとても面倒です・・・。
私が一度怪我をしたのは、クレーコートでラインの出っ張りにかかとを引っ掛けて後ろに倒れて手首を強くついたときです。
そのときは痛みもそこまでではなく放置していたのですが、夜にはミリ単位で動かしても痛いほどに膨れあがってしまいました。
舟状骨という引っつきにくいとても厄介な箇所にヒビが入ったのですが、これがレントゲンではハッキリ見えず、MRIのある大きめの病院に紹介状を書いてもらってわざわざ診察してもらうことになったのです。しかも手首を移すだけだというのに、脳のMRIと同様全身あのゴンゴンなる暑いトンネルのなかに収まって30分かかりました・・・^^;
しかも、レントゲンでハッキリと見えない程度のヒビなのに、ギプスで安静にしてたら更にヒビが大きくなって、最終的にボルト手術になったのでしたorz
ボルト手術後は再びギプス期間を経てから、手首を固定するサポーターを作ってもらったので、下手に自分で購入するより医師に相談して作ってもらったほうが良いかもしれません。
話がそれましたが、MRIでの検査は面倒な上、お金もかかるのでやりたくないものです。
とはいえ、痛みが強かったり、安静にしてても痛みがひかないのであれば、早めに病院を受診されることをおすすめします。放置してると悪くなることのほうが多いですし、軽い腱鞘炎ならレントゲンや湿布だけで済んで安心できますしね。
そして治ったなら、自分のフォームのどこで痛みが出るのか認識し、そのフォームをやめることです。
フォームは無数にあります。自分の身体にあったフォームを追求するのも楽しいものです。
さいごに
リストワークという言葉があるように、テニスでは手首をよく使います。
ですが、手首そのものを動かすことで生み出す力はわずかです。
足腰、肩、腕、それらで生み出された力を最後にロスなく伝える役割がメインであり、それには手首を痛めるような動きは含まれないはずです。
ボレーであれば90度の角度を保ってラケットを支えるだけ。芯を外して打球したとしても、よっぽどでない限り痛めることはありません。
自分の身体にとって無理のないフォームで練習していきましょう。
P.S.
怪我をしない身体づくりも大切です。
背屈側のストレッチ(おいでおいでの方向へ指先を反対の手で押さえて手首を伸ばす)はよくやりますが、撓屈側のストレッチ(バイバイの方向へ以下同文)は忘れがちです。